閑話_if
初めて会ったのはいつの頃かは忘れた。
どんな日なのか忘れた。
晴れた日なのか、曇りの日なのか、雨の日なのか、雪の日なのか、雷の日なのか、それとも......
これだけ並べても思い出せないのならもう無理なのだろう。
とにかく覚えているのは、たった一言。
「助けてほしかったら、またえんりょなく言えよ。」
だった。
あの頃は遠慮なんて言葉は知らなかったから、夕方とかにやっているらしいテレビか何かで見聞きしたんだろう。
でもそんなことは関係なく。絵本や小説に出てくるようなヒーローみたいなその一言が私を助けてくれた。面白くない、生きていたくない、消えてしまいたい思う毎日から明日に向けて生きようと思う勇気をくれた。
生きていくのに勇気がいるのかどうか疑問に感じるかもしれないけれど、少なくとも私には必要だった。
そう必要だった......。
?
〈いつも彼の話に移る〉
〈記憶の修復が遅くなっているとはいえ修正を何回も行うのは.......〉
外で声が聞こえる。
私に関係があることのようだけど何を言っているかはわからない。
もう少し寝ていよう。
彼と出会って、学校に行って、遊んで.......
楽しいや嬉しいを学んで、感情を共有することを学んで、彼以外の話す人を増やすことのワクワクドキドキを知って......
私は彼に「恋」という感情を持ったのだろう。
今までに持ったことがなかったこの感情は、いろんな言葉で定義できることを知っていつつもどういう風に形容すればいいのか分からなかった。
持てたことに嬉しかったけれども、同時に寂しいという感情を知った。
「泣きそう」という触れたことがない、触れようとしてこなかった感情にも気づいた。
彼に会って、いつの間にか私は私の知っている「私」ではなくなっていた。
それが怖くも恐ろしくもあった。
自分自身のことが他人のように思えてどう向き合えばいいのか分からなかった。
でも、彼ならこの感情たちへの向き合い方を知っているのかな。いつか聞いてみたいな。
そろそろ、朝かな。起きて学校に行って、早く彼に会いたいな。
〈............〉
〈"overewrite"〉